おおたとしまささんによる親子3組の実話をもとにしたノンフィクション物語であり、ルポルタージュ、『勇者たちの中学受験~わが子が本気になったとき、私の目が覚めたとき』を読みました。
出てくる3つのエピソードの、あらすじとネタバレです。
また本の中には、「早稲田アカデミー」が実名でなかなか酷く書かれています。
現在、子どもを早稲アカに通わせている保護者の率直な感想です。
『勇者たちの中学受験』あらすじネタバレ
親子3組のエピソードが登場します。
学校名は実名。
青…男子校、緑…共学、赤…女子校。
エピソード1:アユタ
続柄 | 名前 | 職業 | memo |
---|---|---|---|
父 | 水崎 大希(みずさき たいき) | 会社員 | 茨城出身 中学受験経験なし 趣味テニス |
母 | 真澄(ますみ) | パート | 中学受験経験なし 競争に興味なし |
★ | アユタ | 小6 | 小1〜花まる学習会 小2・2月〜早稲アカ 小4・冬季講習〜サピックス 小2〜小6・5月テニス |
妹 | ? | 小2 | スクールFC |
新小3(小2の2月)から「早稲田アカデミー」に通い出したアユタ。
開成、麻布、武蔵といったトップ・オブ・トップの御三家レベルは難しいとしても、栄光、聖光、浅野の神奈川御三家あたりに行ければいいなあ……
と父の大希は、希望を抱いていた。
アユタは新小4のとき早稲アカ校舎、約30人の中で1番になったが、しだいにクラス落ち。
本人の希望により、小4の冬季講習から「サピックス」に転塾することに。
転塾時、サピックス偏差値で45〜46だったが、小6夏休み直前の組み分けテストで偏差値40に落ちる。
アユタは淡々としていて、夏休み直後は偏差値41。
栄光(偏差値61)は無謀で、現実を受け入れるべきときがやってきた。
クセのない問題を出す慶應普通部(偏差値59)にターゲット変更したが、11月には慶應普通部も諦める。
もともと第三志望だった浅野(偏差値58)を第一志望に。
アユタの希望は、テニス部がそこそこ強い男子校だった。
小6の秋から始まる日曜日の「サンデー・サピックス」も慶應普通部から サレズカマ(サレジオ・逗子開成・鎌倉学園)コースに変更。
1/13
1/10におためしで受けた、佐久長聖の結果発表日。
入学時納入金免除「B特待」での合格だった。
新型コロナウイルスの感染者数急増のため、アユタは1/14から学校を休むことに。
大希は残り二週間のカレンダーをエクセルで自作し、アユタに聞きながら学習計画をたてた。
大希は中学受験本を多く読み、たくさんのオンラインセミナーにも参加した。
口出ししたくなる自分の感情をグッと飲み込み、アユタの気分を優先。
サピックスオープン4回の平均偏差値は46に持ち直した。
2/1
「第一志望から第六志望まで受けるけど、どこも遜色のない学校だから、受かったところに堂々と通いなさい」
とサレジオ入試に向かう車内で、大希はアユタに伝えた。
午後は、第六志望の山手学園。
夜には山手学園の発表があり、合格だった。
2/2
アユタには平常心で鎌倉学園に向かってもらうため、山手学園合格は伝えていなかった。
8時ごろアユタを鎌倉学園に送り出し、10時に前日に受けたサレジオの結果発表。
不合格だった。
大希は約1時間も茫然自失。
鎌倉学園の試験を終えたアユタに、山手学園○ サレジオ×の結果を伝え、午後は第五志望の中大横浜に向かう。
19時に試験は終了し、午前に受けた第三志望の鎌倉学園の発表。
合格だった。
2/3
第一志望の浅野。
大希はアユタを送り届けると、鎌倉学園の合格書類の受け取りと、中大横浜の合否確認の仕事があった。
中大横浜は合格。
2/4
第二志望のサレジオ2回目。
大希はアユタを送り届けた後、妻と浅野の発表を見るためいちど帰宅。
大希の心構えができていないうちに、妻が横から勝手にクリックして不合格を通知され、軽くパニック。
大希がうなだれたままアユタを迎えに行くと、
「これからは遊んでいいんでしょう?」
と第一声。
車に乗ってからアユタに浅野不合格を伝えたが、
「そう……」
とだけ表情を変えることなく返事した。
帰宅するとすぐにアユタは公園に遊びに行った。
大希は、アユタのこれまでの頑張りを讃えてやりたい一方で、あれだけやったのに、結局第三志望か……という気持ちが拭えなかった。
2/5
昨夜、深酒した大希が二日酔いの朝。
「アユタ、中大横浜にするってよ」
と真澄から衝撃の一言をあびる。
ずっと受験にはノータッチだった母・真澄から男子校より共学のほうがいいとアドバイスされ、アユタが昨日公園で遊んだ友達から、
「男子校なんてありえねーだろ、共学のほうがいいに決まってんじゃねーか」
と言われたらしい。
中大横浜は第五志望。
何度も二人で相談しながら決めた志望校の優先順位は何だったのか?
と大希は虚しくなる。
サレジオ2回目の結果を、最後は家族全員で見る。
不合格だった。
やはり決意は変わらず、アユタは中大横浜に行くことになった。
2/1 午前…サレジオ(偏差値52)第二志望 ×
午後…山手学園(偏差値46)第六志望 ○
2/2 午前…鎌倉学園(偏差値50)第三志望 ○
午後…中大横浜(偏差値51)第四志望 ◎
2/3 浅野(偏差値58)第一志望 ×
2/5 逗子開成(偏差値52)第五志望 受けず
アユタ父まとめ
蓋を開けてみれば、偏差値通り。
中学受験は親が九割
というのは嘘だった。
できる限りのことをした自信が大希にはあるが、結果がともわなかった。
自分たちの中学受験が、良い経験だったのか悪い経験だったのかは、まだよくわからない。
でも、結局、結果だけに目がいってしまった自分自身の視野の狭さ、器の小ささが見えてきた。
4つ下の妹の中学受験をさせるかどうかは迷っている。
エピソード2:ハヤト
続柄 | 名前 | 職業 | memo |
---|---|---|---|
父 | 風間 由弦(かざま ゆづる) | 会社員 | 中学受験経験なし 高校、大学受験ともに不合格 キレやすい |
母 | 悟妃(さとき) | 主婦 | 名古屋出身 中学受験経験半分あり のめり込みやすい |
兄 | タカシ | 中2 逗子開成 | 地元の個人塾 小6・正月特訓〜早稲アカ |
★ | ハヤト | 小6 | 小3・6月〜四谷大塚 小3・2月〜早稲アカ 小6・夏〜スピカ/馬淵 |
妹 | ナツミ | 小4 | 早稲アカ |
ハヤトは塾で、「三冠」に最も近い男と呼ばれていた。
三冠とは、男子最難関である灘(偏差値73)、開成(偏差値71)、筑駒(偏差値73)すべてに合格すること。
※四谷大塚の80%偏差値にて
ハヤトは小4からずっと「早稲田アカデミー」の特待生で、ほとんどの授業料が免除。
宿題はすべて2回ずつ。
毎週土曜日に、週テストを4回分解いてからハヤトは本物の週テストを受けていた。
早稲アカの校舎では、常に一位。
母・悟妃も父・由弦もどんどん勉強をさせ、いつしかハヤトは、言われないとやらない子になっていた。
小6の夏から、志望校別対策講座「NN開成」が始まる。
7クラスあるうちのトップクラスにハヤトは入った。
ハヤトは途中式をきっちり書かないクセがあり、由弦はたびたびぶち切れた。
由弦は散々暴れたあと家を出て、数時間後、酩酊して帰ってくるパターン。
1/13
1/12におためしで受けた、栄東「東大特待クラス」(偏差値65)の結果発表日。
算数満点&「特待」での合格だった。
1/14
ハヤトは「三冠」のための関西遠征に。
新幹線代もホテル代も早稲アカもちの、二泊三日受験ツアー。
塾にとって、灘の合格実績は最高の宣伝素材になるのだ。
悟妃が付き添ったが、自意識過剰のためママ友との人間関係で気が重かった。
同じ校舎から灘を受けるのは、ライバルで親友の3人。
- 仁藤くん
- 三浦くん
しかし、優秀なハヤトは小6の夏から早稲アカのほか、早稲アカグループの最上位ブランド「スピカ」にも通っていたため灘ツアーはスピカ生として参加し、早稲アカのママ友とは離れられた。
1/16
灘の入試二日目が終わったが、ハヤトはやけに大人しかった。
母の勘が働く。
ヘトヘトだったので、由弦に車で迎えを頼んだ。
「ちょっとだめだった」
と報告したハヤトを、由弦は否定し怒った。
そんな由弦にドン引きし、悟妃はついに愛想を尽かす。
1/17
やはり灘は不合格。
早稲アカの校舎から、全所属生徒の保護者を対象にしたメルマガによって、悟妃は灘一名合格出たことを知り傷つく。
合格したのはトップ3人のうち、本来二番手だったはずの仁藤くんだった。
それまでハヤトの学習計画を立て、過去問対策もしていた由弦はひきこもり、ハヤトを見捨てた。
ハヤトは依然、途中式を書かず部分点がもらえないため、成績が落ちる。
SOSだと思った悟妃は、中学受験をやめてもいいじゃないかとハヤトに諭すが、ハヤトが譲らなかった。
1/30
オンラインで、早稲アカの出陣式。
落ちた二人にデリカシーなく、講師は灘合格の仁藤くんを褒め称えた。
悟妃は早稲アカに不信感を覚えていた。
行く気はないのに三冠を前提にした併願校選びをすすめたり、合格実績稼ぎに感じたからだ。
2/3
筑駒受験日。
2/2に受けた聖光は合格。
2/1に受けた開成は不合格だった。
2/5
筑駒は不合格。
ハヤトは聖光に行くことになった。
2/1 開成(偏差値71)第二志望 ×
2/2 聖光(偏差値70)第三志望 ◎
2/3 筑駒(偏差値73)第一志望 ×
ハヤト母まとめ
3人子どもがいて、素質が全然違う。
どんな子でも努力をすれば偏差値50くらいにはなる
というのは間違いだった。
妹のナツミは、本人の希望により中学受験はやらないと決定。
ハヤトのようないわゆるグレーゾーンでこだわりが強いタイプのほうが、中学受験には有利なのかもしれない。
悟妃は由弦に離婚を申し出た。
聖光に通い出したハヤトは、抜け殻になってしまった。
悟妃は後になって、ハヤトが1/31の授業の後、早稲アカの国語の先生から徹底的に罵倒されたことを知る。
悟妃は塾の先生のほうばっかり気にして、ハヤトを守ってあげれなかった。
受験エリートとしてのプライドを回復することではなく、偏差値やテストの点数で人間を評価する価値観との決別が、ハヤトのやらなければいけないことだとはっきりした悟妃。
何かの記事で読んだ、カリスマ数学教師の井本陽久さんの私塾「いもいも」に連れていくことに。
ハヤトに笑顔が戻った。
子どもがハッピーなら、親はそれだけで幸せになれる。
エピソード3:コズエ
続柄 | 名前 | 職業 | memo |
---|---|---|---|
父 | 奥山 健志(おくやま たけし) | 会社員 | 中学受験経験なし |
母 | 咲良(さくら) | パート | 中学受験経験なし |
姉 | アズサ | 中3 恵泉 | 小5・秋〜個別指導塾 |
★ | コズエ | 小6 | 小3・2月〜うのき教育学院 |
父・健志と母・咲良は、姉・アズサのときにしんどい中学受験をさせてしまった反省があった。
突然本人の希望により、小5の秋から個別指導塾に入れたが、授業内容が不明。
アズサがいい成績をとったとき、カンニングを疑われた。
冬季講習に入ると、毎日のようにアズサへの批判メールが咲良のスマホに届いた。
限界になり、残り一ヶ月は塾を辞めて健志が教えることに。
優しかった健志は、アズサに対して苛立ちをぶつけるようになった。
妹・コズエに見つけた中小塾の「うのき教育学院」は、送り迎えと弁当作り以外すべてお任せ。
家ではくつろげる場所にして、頑張りをほめてあげるだけ。
咲良は塾選びに満足していた。
しかし、小5のとき新型コロナウイルス感染拡大でオンラインになってから、コズエの成績はゆるやかに下降。
偏差値40台ギリギリ乗るくらい。
小6になっても率先して勉強する様子がなく、咲良は小言を言うようになり、コズエはストレスで「氷食症」になった。
夫婦で話し合い、コズエの学力をもって、コズエにできる努力の範囲で無理せずに入れる女子中高一貫校に出会えれば大成功という方針に。
1/14
1/8におためしで受けた、盛岡白百合(偏差値42)の結果発表日。
合格だった。
2/1
午前は、第一志望の香蘭。
午後は、第四志望の三輪田。
夜には発表があり、香蘭不合格、三輪田合格だった。
2/2
姉が通う恵泉の受験日。
手応えがあったので塾の先生とも話し合い、午後は普連土ではなく、第一志望の香蘭を再チャレンジすることにした。
夜には恵泉の発表があり、合格だった。
2/4
香蘭は2度目のチャレンジも叶わなかったので、大本命の普連土受験日。
夜には発表があり、合格だった。
コズエは普連土に行くことになった。
2/1 午前…香蘭(偏差値58)第一志望 ×
午後…三輪田(偏差値46)第四志望 ○
2/2 午前…恵泉(偏差値50)第三志望 ○
午後…香蘭(偏差値61)×
2/4 普連土(偏差値51)第二志望 ◎
コズエ母まとめ
いちどは中学受験を諦めようかとまで思い詰めたが、いろんな意味で偏差値にとらわれない視野を得て、自分たちの挑戦そのものに、みんなでわくわくできた。
中学受験を家族にとってのいい経験にできるかどうかは、子どもの成績や第一志望合格よりも、自分たちの歩んできた道のりに納得感を得られるかどうか。
『勇者たちの中学受験』感想

『勇者たちの中学受験』はルポタージュ(綿密な取材を通して事実を客観的に叙述する)とされているものの、率直に「おおたとしまささん的フィルター」がかなりかかっていると感じました。
伝統校あるいは名門校は、「ハビトゥス」(生徒たちの生き方に影響を与える学校文化)が強力。
伝統校推し。
親も片方の一方的な目線です。
3つのエピソードとも首都圏西側の話で偏っており、東側住人としてはピンとこない部分も。
“たまたま”とは書かれていますが、よい塾として実名が出されている「うのき教育学院」と「いもいも」は、おおたさんの知り合い。
また、ダメ塾として出てきたエピソード3の個別塾は、名前が出されていません。
ダメ塾として出てきた大手の「早稲田アカデミー」は、塾の仕組みとして最悪。
またトップレベルを教える国語講師が、生徒のメンタルを壊す最悪講師に書かれています。
たとえ教師が n=1 であったとしても、早稲アカにそんな教師いるの?と。
(もちろん子どもの証言だけで真偽は不明ですが)
現在、早稲アカに子どもを通わせている保護者としては、残念な気持ちになりました。
上場企業の「早稲アカ」。
ビジネスで利益を求めるのはわかりますが、外部生など一部の優秀層に肩入れするのはやはりやめてほしいですね。
「トロフィー受験」(通う気がないのに「最難関校合格」称号を得るための受験)も、塾選びのときわかりやすい実績を見るだけの保護者にも責任があるのでしょう。
おおたさんは断罪してますが、どこ受けるかは自由なので子どもが決めたらいいと思います。
客の生徒だけでなく、講師など働く従業員にも、塾がいい環境になってほしいと願わずにはいられません。
結局のところ、おおたさんの伝えたい中学受験の世界観のため、3つもこのチョイスで、この並びでしょうが、読者はそれすらも見極める必要があります。
ほんとに闇落ちのご家庭は、取材も受けないでしょう。
まとめ
中学受験は、それぞれ。
“過熱してる”と言われていますが、あおってるのはメディアで、実際、みんないろんな価値観があって、中学受験も多様化しているのではないでしょうか。
エピソード2では離婚まで至りましたが、中学受験がきっかけであって、もともとダメだっただけ。
3つの家庭を覗き見するのはワイドショー感覚で、自分の目前の子どもを見ましょう。
夫婦仲良く〜過ごしましょう。
あたりまえ体操〜♪
ばりに当たり前ですが、うちも今まだ5年生だから、受験間近になったら私にもドス黒いものが上がってくるのかも……。

カルトダメ。ゼッタイ!
そのときは、『勇者たちの中学受験』をまた読み返したいです。
みんな笑顔で過ごせますように!
エピソード3で出てきた『沈丁花』いい歌ですね♪↓
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